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›2001年04月07日(土)

さくらの花の咲くころに。

完全に学業優先のJr.がいるんだよ、と、最初にそう聞いたのがいつだったか、今となっては記憶もおぼろですが、一応「学業優先」と言いつつも、実情は…?と傍目には感じられる中で、彼は本当に「学業優先」しているように見えた。

Jr.とはいえ…いや、Jr.だからこそ、競争社会なのに、頑なに彼は、試験前の休業というスタイルを守っていた。1ヶ月近く姿を現さないこともあったし、その前の会場までは確かにバックについていたはずの先輩のコンサートに、突然いなかったりもして、そんな時に自分の学生時代のスケジュールの記憶を辿ってみて「ああ、試験期間なんだ」と思ったりもした。

「いついなくなっちゃうかもしれない」という思い(不安)は、その人がJr.のファンをした事があれば、大なり小なり一度は持った事があるものであるような気がする。実際何人ものJr.が、やめていった。そして、これからもそれを止める事はできないだろうと思う。そして、不安はいつも、ひっそり存在している。

なぜだか私は、桜井翔に対して、この不安を他のJr.に対するよりも…もしかしたら自分が好きだなと思っているJr.の子に対して思う不安より遥かに強く、持っていた。

と言うより、彼はわかりやすく、そう思う時期が多かったに過ぎないのかもしれないのだけど。
「この試験が終わった後、彼は戻ってくるだろうか?」
姿を見ない試験期間中の番組を見て、そう思ったことが何度もある。
そして、しばらくして試験を終えた彼が、先輩のバックであったりJr.の番組であったり、姿を現した時は、ほっとした。
「戻ってきたんだ」
いつも、そう、思った。

私がその不安を最も感じていたのは、毎年春、だった。
春になると、学年が上がる。
さくらの花が咲くころ、一学年進級した「学業優先」の彼は、もしかしたら、クラブ活動を上級生が引退するようにすうっといなくなってしまうかもしれない、そう思っていた。
彼は、期限を彼の中だけで、決めているかもしれない、そして、それは今年かもしれない。
毎年、そう思った。
だから、5月の初め、新緑の頃、彼の姿を見つけるとほっとした。
杞憂でよかった、と思っていた。
それで、不安が払拭されたわけでもなかったけれど「とりあえず」ほっとした。

そんな風に思っていながら、最初から「桜井翔」は好印象だったわけではなく、むしろ、逆だった。
「小生意気なガキ」が第一印象だったし、「学業優先」は「逃げ道」を作ってるということじゃん、と思っていた事もあった。したたかだな、と思った事さえあった。

しかし、彼を見なおした、と言うとおこがましいけれど、一瞬にして、彼の印象が変わったきっかけが、あった。

それは、夏のコンサートで、翔くんがKinKi Kidsのバックについていた時のことだった。
そのコンサートを見たのは、地方の会場で、その時の彼の立ち位置は決してセンターポジではなく、端の方だった。(たまたまその曲がそうだったのかもしれないけれど)。
そして、その場所には、満足に光は、当っていなかった。
その場所には、曲によって違うJr.が来ていたはずなのだけれど、今でも私の記憶に残っているのは、桜井翔だけなのだ。

ぶっちゃけた話、誰だったか印象にない、他の数人のJr.は、手抜きだった事だけは印象にある。
他のJr.の態度からは「ライトの当たらない、地方会場のこんな隅っこで、マジメに踊ってらんねーよ」と考えてそうな印象を受けた。
しかし、桜井翔が、その「光の当っていない場所」でもちゃんと踊っていた。
だからその日の2部の公演では、いつのまにか翔くんを目で追っていた。
実は、私が最初に「バックで踊るJr.に目がどうしても行っちゃう」と言う状態になったのは、この時が最初なのだ。

光があたってるところで、お膳立てのできてる場所で、目を引くことができるのは当然だと思う。
光の当っていない場所で、惹きつけた引力。
その惹きつけたダンスをしている桜井翔を見て、思ったのは「この子、ホントに踊るの、好きなんだ」という事だった。
だからその時、踊っている彼を見て、なんとなく、確信した。
彼は、辞めない。
そう確信したというよりむしろ、こう思ったという方が、正しい。
「桜井翔には、辞めないで欲しい」

そしてその数年後、彼は、「嵐」の一員として、デビューした。

翔くんが「嵐」としてデビューして「いついなくなっちゃうか…」という不安は半減したと言っていい。
見ていられる時間の猶予に、余裕がもらえたと思った。
いや、半減どころじゃなく、もっともっと、安心していいのかも知れない。

そして、春がきた。
以前は思っていた。もし、彼がすうっといなくなるなら、この時かもしれない、と。
そう思っていた年のさくらの花の咲く頃。
桜井翔の大学入学は、すうっといなくなるどころか、大々的に報道された。
それはそれで、まぁ、なんだかな…なのではあったのだけど。
とりあえず、不安な春では、なかった。

その時に「ジャニーズが慶應生になったのではなく、慶應生がジャニーズになった」「大学は行くものだと思っていたから、行かないと言う選択はなかった」と言っていて、至極当然なのだけど、改めて納得した。
桜井翔は、自分を見失わないために、自分を貫くために、頑なに学業を優先したのだと。

Jr.という立場の子たちは、明日が不安じゃないことなんてあるんだろうか?
ファンの子たちが感じている以上に、ヤツらは不安なんじゃないだろうか。

学業優先していた翔くんは、休んでる間に、自分のポジがなくなってしまうかもしれない、という不安も、ファンの子に忘れられてしまうかもしれないという不安も、あったはずだ。
辞めていくJr.のことも、何度も見送ったはずだ。
もしかしたら、彼が休んで戻ってきたら、いなくなってしまってたJr.もいたかもしれない。
戻って来る事が不安じゃなかったことなんて、きっとなかったのじゃないかと、思う。
彼は、たくさんの不安を実感として知っていたから、だから、言ったのかもしれない。
「ついて来てくれた、ファンと」
「一緒にがんばった、総てのジャニーズJr.に」
ありがとう、と。

不安だったあの季節。
初めて嵐がコンサートをした季節。
今年、彼は踊る。
誰よりも、光の当たる場所で。
そして、惹きつける。
さくらの花の咲くころに。

そう、さくらは毎年、満開になるのです。